<ちゃっちゃかパンについて>
コロナ禍を機にこどもパン教室のレシピを大きく見直して全く新しいアプローチの生地作りを始めました。誰でも簡単に、単純な配合で、少ない道具と小さな力で、手こねでも生地がべとべと手に付くことを避けつつ高加水で、そしてなにより最短時間で、できるだけ色々なパンが焼けるように、徹底的に考え抜いてたどりつた製法です。
(2024年5月 パン生地製造法の特許を取得しています。)
(2024年5月 パン生地製造法の特許を取得しています。)
目指したのは
①粉からこね始めて小一時間で出来上がるイーストを利用したパンであること。
②力が弱く、集中力の続かない子どもでも作れるパンにすること。
③道具や材料も最低限にし、後片付けまでを含めたパン作りのハードルを下げること。
④いろいろなパンが一定時間で、一定の工程を踏んで作れること。
最初はフォカッチャを作ってみました。
計量も手早くできるように工夫したので、ワンボウルに材料を計り入れていき、水だけコップに計り取ればすぐにこね始められます。
最初は箸で混ぜるだけでパンになるかな?という実験でした。
それだけではぼそぼそとしたパンもどきにしかなりません。
試行錯誤を経て、独特のこね方にたどり着きました。
材料をが混ざったらオイルでコーティングしてしまうのです。
(一般的にはオイルはグルテン形成を阻害するのでこねる前に投入はあり得ません)
手こねにしたら手にべたべたとしてしまうような高加水配合(国産小麦に75パーセントほどの水)ですが、生地をオイルコーティングしてからたたいて捏ねるので生地が手に付きません。
ちょっとしたコツを抑えれば、台にも手にもべたつかず、生地を捏ね上げられます。
部分的にグルテンを強化して生地を作る方法になっています。
こねあがった生地はグルテン膜でおおわれてつるんときれいになります。
こねている時間は2~3分でしょうか。もっと短いかもしれません。
これは見ていただかないと、わからないかもしれません。
配合を思いっきりシンプルにしたので、パン生地もシンプルでいろいろなパンに応用ができました。
この生地でいくつかの応用パンを考えるのに時間はかかりませんでした。
最終的には同じ配合でクロワッサンのレシピも作りました。
シンプルすぎる食事パン向きの配合で菓子パンには向かなかったので、ミルク入りの甘めの生地も用意しました。
今は一年間で教えるパンをまとめて焼いてみています。
もちろん、副材料の用意や成形にも時間はかかりますから、どれも1時間で出来上がりとはいきませんが、おおむね60分から90分の教室で出来上がるパンが日々どんどん生まれています。
この基本の生地を少し変えたり、副材料や水分の量、成形を自分で考えてオリジナルレシピを書き実際に作ることも子どもパン教室のだいご味でもあります。
毎月通う子どもパン教室の1月2月のクラスでパンを作りつつオリジナルレシピを書いて、3月にはそれぞれのパンを焼いています。
実は、ちゃっちゃか以前の子ども教室向けのパンは最初の20分ほどをこね時間に充てていて、体重をかけてグルテン膜ができるまでみんな一生懸命こねていました。こね台は丈夫なものが必要だったし、捏ねていると手にいっぱい生地が付いてしまってこねたあとは手洗いに行列ができました。こねやすいように少なめの加水だったこともあって、パンは固くなりやすく、翌日はあまりおいしいものとは思えませんでした。
それでも、子どもパンや手こねの楽しさに意味があると思って20年続けていたのです。
子どもたちに手こねのパンを教えていながら、大人の教室や自家用のパンは機械でこねるという具合でした。大人向けの教室は機械でこねる事もあり、2時間から2時間半かけていました。
画期的なこね方のチャっちゃかパンで、これまで手こねに消極的だった大人の生徒さんも楽しくこねてもらえるようになりました。ちゃっちゃかパンがこれまでの一般的なものとと違うこね方になるので、教室に取り入れるか否か、あまりに簡単で、つまらないのではないか、普通のこね方を教えないのは子ども向けの教室としてどうなんだろう?と悩んでいたのですが、今ではすっかりみんなちゃっちゃかパンのとりこです。
ちゃっちゃかパンを作るようになってから、私の自宅用のパンもちゃっちゃかパンが登場するようになりました。2斤の食パンとか、よほどたくさんの菓子パンを作りたいときだけはニーダーが登場しますが、普段の夕食にパンを、と思えば料理と並行してちゃっちゃかパンを焼きます。わが家のキッチンに一般的な手こねは全く登場しなくなりました。
そんなちゃっちゃかパン、これってすごいパンじゃないか?
夫が言い出しました。
「特許取れるかもよ」
二人三脚で特許の文章を書き、2021年5月、特許庁に提出しに行きました。
ふつうは、弁理士さんにお願いして書いてもらうのですが、できることは自分でやってみるという、我が家の方針です。
うつせみキッチンのロゴ(デザインは次男の手によるものです)や「ちゃっちゃか」のネーミングと商標登録に続き、特許も書きあげることができました。
出願、公開、審査請求、拒絶理由通知、審査官面談、手続き補正を経て、2024年5月に製法特許を取得しました。
開発を始めてから4年、出願から3年。感慨深いです。
ちゃっちゃかパンというネーミングも気に入っています。
手軽に早くできる雰囲気のある「ちゃっちゃか」という文字列がこの製法にぴったりはまるので、こちらもうつせみキッチンのロゴの商標を取得した時に一緒に商標登録をしています。
ちゃっちゃかパンの製法は特許になったことで公開技術になっています。特許庁の検索を利用すれば誰でもどんな技術か知ることができます。
技術情報は「ちゃっちゃか」という名前ではなくて、特許番号7497326 です。
特許は文書と図だけで生地作りの説明をしたもので、公開技術ではありますが、それを読んだだけではたぶん、簡単にこねることはできないです。なぜかというと、製パンの常識とも近年流行のこねない長時間発酵パンの作り方とも異なっていて、それはレシピ本や大手や個人の手こねパン教室で知るこね方と違いすぎるからです。また、道具の使い方、出来上がった生地の扱い方などいくつかのちょっとしたコツがあるのです。
家庭でのパンつくりのハードルが下がる画期的な発明だと自負しています。
時短で作れることで、パン教室の先生は短い時間でのレッスンが可能になります。自宅外で施設利用料が必要な場合や、赤ちゃん連れの生徒さんや放課後教室など生徒さんの時間的負担を減らしたい場合、午前中のレッスンが午後にずれ込むことでランチの用意が必要になっていた先生、お休みの日にパンを習いに行くと一日つぶれてしまっている生徒さん、長時間のレッスンは疲れてしまうシニア世代の方などにとって時短パン教室は強い味方です。
手を汚さない手ごねパンであるちゃっちゃかパンは最低限の道具とスペースでのパンつくりを可能にしました。台所にまな板一枚分のスペースがあればあっという間に焼き立ての食事パンが用意できます。ハンバーガーレッスンなど料理教室での追加メニューにも向いています。
ちゃっちゃかパンについて、もっと知りたくなったら、ぜひ公式ラインからお尋ねください。
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